大王が僕に嘘を吐いていることなどとうの昔に知っています。
彼が自分をどうしようもなく嘘吐きだと思っていることも、自分だけが嘘吐きだと思っていることも、全部全部知っています。
彼は確かにどうしようもないろくでなしの嘘吐きですが、だからと言って彼だけがろくでなしなわけでも、嘘吐きなわけでもありません。
自分だけが嘘を吐いていると思っているところが、彼は愛しいと思います。
嘘がばれないのが一番良いことだと、必死に信じているのが愛しくてなりません。
嘘とはばれるものなのに。
誰も気付かぬ内に嘘と本当をすり替えて、事実は忘れてしまえば良いだけなのです。
いつか彼が本当を告げても、それは僕にとっての嘘なので、きちんと否定してあげます。
彼の絶望を知って尚、彼を助けようとしないのは僕が鬼だからなのでしょうか。
僕は彼をとても大事に想っていますしこの気持ちはおそらく愛というものなのでしょうけれど、愛しい人がつらいのを救ってあげようとしないのは矢張り僕が人でなしの鬼だからなのでしょう。
けれど彼を救うことの出来る存在などどこにいるでしょう。
もしもいるなら今すぐに彼を楽にしてあげてと、願う人もいるでしょうが僕には全く思えません。
彼が救われるということはきっと僕の前から消えることを意味しているので。
そうなるくらいならいっそ彼に救済など訪れないで欲しいと、鬼であるところの僕は希いさえするのです。
あなたが嘘を吐いていることなど知りません。
毎日辛くてつらくて死にたいと思っていることなんて。
「全部」
嘘にしてあげます。
そうして今日も僕の世界は創りなおされ、ただ一つ変わらない、
「愛しています」
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≫閻魔編。
秘書の嘘。
鬼男くんは自分が閻魔大王の幸せになってやる
って思っているので
閻魔の嘘を見破って、真実さえも否定したい。
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