トンネルから出た瞬間の目を焼くような眩さに、何億度目か目を眇めた。
 山陽新幹線はトンネルが多い。
 博多を出て、朝焼けの中を新大阪へ進む。いくつものトンネルを抜け、昇りゆく朝日に目を洗われたその先に、彼が待っている。
 組んだ腕を気難しげに指で叩き、やや幼い印象の顔を苛立たしげに顰めていた彼は、自慢のN700Aがホームに滑り込むやいなや靴底を鳴らしてやってくる。
「遅いぞ、山陽!」
「ごめんごめん」
 始発から何本と経っていないのに、既に三分遅れだ。待っている間に頭の中ではさんざん文句と説教を唱えていたのだろうが、乗務員交替の時間は短く、彼はまあいいと鼻を鳴らして山陽を追い越していく。
「他に連絡事項はないだろうな?」
「うん」
 発車のベルが響く。山陽はホームドアの外へ下がり、彼は車両に乗り込んだ。顎を引き、白手袋を嵌め直す後ろ姿を、「東海道!」と呼んだ。
「本日も、安全運行を」
「当然だ」
 敬礼をする彼との間に、扉が閉まる。流線型の車体が滑らかに動き出し、彼はあっという間に東京を目指している。ホームから出て行く東海道新幹線が朝焼けの中に見えなくなるまで敬礼で見送り、山陽はまばたきをして、小さく笑った。
「眩しいねえ」





-----------------------------------------------------------------
2016.3.14.
拍手ありがとうございます!
CPじゃない山陽上官と東海道上官を書いてみました。
昔は神様、今は同僚。そしてずっと、憧れの存在。