源はいつだって僕に美しく触る。彼に触れられると僕の肌が国宝級の白磁の陶器になったような感触すら覚えるし、時たま指を絡める髪は絹のように滑らかなのではと思う。こういうところに育ちの良さが出るのか、いやいやこれは教育でなんとかなるものなのか。もしも僕が女だったら彼の黒髪もすらりとした長身も、人への触れ方も全て遺伝した子供を産むことができるのに。こんなやつの親になるくらいならば死んだほうがマシだけれど。
「何考えてんの?」
 源が云って、後ろから僕の体を抱きしめる。僕は行為の後に彼の顔を見るのが嫌い。綺麗だと思っていたものがそうではなかったと思い知らされたような、お門違いだとわかってはいるけど裏切られたような気分になるから、いつも背を向けている。そして性欲も処理されたから欲情することもない。源の指をさらさらと撫で、爪の形を一つひとつ較べながら答える。
「別に何も」
 ふうん、と気のない回答に気のない返事。夜になったら僕は家に帰って春華とヨーコちゃんと楽しく笑う。源は何をするのか知らないけど仲間と僕のことを敵として話したりもするんだろう。だから今はこの憂鬱を愛す。










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2009.05.04.
勘太郎視点の頼勘です。
頼勘にはいろんな時期があって、
甘々だったり憎々しかったりの間を
行ったり来たりしていると思います。
これは勘が頼を嫌いなとき。

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