兄がスーツを着るところを見るのが好きで、ジンはわざと出勤時間を遅らせる癖がある。
 開店準備をしている店の中を我関せずと突っ切って、更衣室のドアを開けるとちょうど、兄が着替えを始めるところだった。
「おう、おせーぞ、ジン」
「うん」
 笑顔で小言を聞き流したジンは、諦めたように溜息を吐いて着替えを続ける兄の後ろに椅子を置いて眺める。
 気に入りの黒いジャケットを脱ぐと、がっしりと筋肉のついた肩や割れた腹筋がジンの眼前に晒される。よく鍛えた体つきをしている割に、あまり日に当たっていない兄の皮膚は白くてアンバランスな印象を受ける。ふうと息を吐き出して肩を回したり、首を鳴らしたりすると、その筋肉が動く。ジンよりもしっかりと表面近くについた筋肉は、しなやかで弾力がある。例えば兄が準備運動をするところなんかを、ジンは間近で見たいと思う。じっと、見て、その動きを目に焼き付ける。記憶の中で触れ、なぞり、つついてみたい。本当にしたら兄は驚いてジンを殴り、怒るよりも呆れると言った方が正しい調子で叱るだろう。それもいいかもしれないな、と気付いたジンは、いつかやってみようと記憶に留める。
 薄い皮膚から浮き出る鎖骨と肩甲骨。胸筋。かじって、舐めて、触りたいそれが、真紅のワイシャツに隠される。隠されたことでより色気が滲み出るのは、スラックスに隠される腰も同じだ。ベルトのバックルを締める金属音が、聞いているジンの神経を叩いてざわつかせる。今しがた兄が締めたばかりのそれを、解いて、抜き取り、その後は? ふふふと妄想にジンは笑う。手首を束ねて縛りたいなんて言ったら、さすがに兄さん怒るかしら。
 ストライプの入った黒のジャケットを羽織り、兄の着替えは完了する。ロッカーの中から香水のボトルを取り出し、しばし迷うように睨んでから元に戻した。
「つけないの? 兄さん」
 後ろから問いかけたジンを、ラグナは首だけで振り返る。面白がるように笑みを浮かべる弟を認めると、鼻の周りに皺を寄せ、香水の小壜を睨んだ。
「嫌いなんだよ、こういうの。自分の体から違う匂いするの、変な感じする」
「ふうん」
 立ち上がり、兄の腰に後ろから腕を回す。踵を浮かせて耳元で囁くと、ジンの吐息が兄の後れ毛をそよがせる。
「でも――こういうことすると、僕の匂い、うつっちゃうね?」
 つ、とジンの指がスーツの上から、兄の肩甲骨をなぞる。肉と骨がジンの指を押し返し、兄が呆れたように溜息を吐くのに合わせ、わずかに動く。重ねた布地の上から透かして見るように目を凝らし、ジンはするりと指を滑らせた。筋に沿わせて脇腹へ。手の向きを返し、臍へと伸ばす。縁をなぞるように伸ばした指を、ラグナが掴んだ。
「やめろ、ジン。――時間だ、おまえも着替えろよ」
 横目で睨む兄にからかうような笑みを返し、ジンは自分の襟元を肌蹴け、見せつけるように鎖骨をなぞった。
「兄さんも見てく? 僕のき、が、え」
「馬鹿か!」
 ジンの頭をぺしりと叩き、隙を突いて兄は仕事場へ――ホストクラブBBへと出て行った。
 ここは階層都市シンジュク。人々の愛憎と欲望が渦巻く街。
 評判高いホストクラブでNo.2とNo.3を張る兄弟が、付き合っていることを誰も知らない。


 乱立するビルの隙間を縫って太陽が沈むと、そのホストクラブのドアにかかったプレートは、いつの間にか裏返されている。CLOSEDからOPENへ。昼から夜へ。全てを虚偽で塗り潰すような漆黒も、街のネオンサインが上書きをする。流れるように人は動き、上辺を繕う装飾品の煌きと、香水の匂いが路地裏へと消えていく。
 ホストクラブBBは、そんな路地裏の一つにあった。
「ラグナはいる?」
「いない」
 訪れた女性の声にかぶせ、ジンが答えた。通りすがりのハザマが呆れたように天を仰ぎ、驚いて見返す女性にジンはにこりと笑いかける。
「代わりに、僕がお相手しよう――そこに座れ」
 こんな言葉遣いでも、ジンはれっきとしたこの店のNo.2である。約半年前に兄と歩いているところを勧誘されてから、それはずっと変わらない。
「ホスト? 興味がないな」
「やってみればいいじゃねえか、ジン」
 冷たい視線で切り伏せたジンにラグナが勧め、それを好機とばかりに勧誘の男はラグナを誘った。定職を持たずにお金に困っていた兄は、男の勧めに軽く心を動かされた。
「ふうん。小遣い稼ぎ程度にはなるか」
「なっ……! 兄さんがやるなら僕もやる!」
 当時から、No.1はハザマという細目の男だ。私生活を誰も知らず、名乗っている名も偽名ではないかと囁かれる。謎の多い男だ。特に指名客が多いようにも見えないのに、集計してみると一番多い。
 指名数の集計は、実際に客の相手をした数で行われる。指名する客の数が多くても、実際に相手を出来なければ意味がない。受け付けで名前を呼ばれることの多いラグナがNo.3に甘んじているのは理由があって、それは勿論ジンの妨害である。
 兄を指名する客を出来る限りもぎとって、自分の指名数に振り替える。ジンを突き動かすのは己の指名数を増やそうだなんて下卑た野心ではなく、兄が女の相手をするのを許せない独占欲だ。どちらがましかという話はしない。兄さんの魅力に気付かないなんて馬鹿かと罵る同じ口で、おまえなんかが兄さんに触れるなと叫ぶ。ヒステリックでいやですねえとハザマは笑う。
 けれどもちろん、ジンにも妨害できないことはある。今もジンが客の相手をする向かいの席に、兄が女を連れてやってきた。ジンの手が滑って床に氷をぶちまけて、声と音に釣られて振り返った兄が呆れた顔をする。ばーか、と声は出さずに口が動いた。兄さんのせいだろう、とジンは睨んで目で詰る。こういうことが毎夜ある。よく辞めさせられないものだ、とときどき思う。
 辞めさせられてもいいのだけれど。
「兄さん、あの女なんなの」
と、更衣室で、店の裏のゴミ捨て場で、帰ってから家で、ジンはラグナを問い詰める。その度に兄は呆れ果てた顔をして「なにって、客だけど」と答えるので、ホストなんて辞めようよ兄さん、とジンは言いかけて、やめるのだった。どうせ、ならおまえだけ辞めれば、と言われるに決まっているのだから。
 ジンとラグナは同じマンションの、隣同士に住んでいる。先に上京した兄を、ジンが追いかけて押しかけた。以前は頻繁に互いの部屋を出入りしたり、一緒に買い物に出かけたりしていたものだが、ホストになってからはとんとご無沙汰している。定休日がないホストクラブBBで、人気を得ている二人が同時に休みをとることはできないからだ。
 ときどき、ジンはこっそり作った合鍵で、こっそり兄の部屋に忍び込む。太陽が空高く明るい真昼、兄はベッドでよく眠り、ジンはその寝顔を眺めて飽きない。ラフなTシャツの裾が捲れたあらわになった体の線を指でなぞり、頬や肩や太腿にキスをする。大抵は起きない兄も、起きたときにはジンを呼び、唇でのキスに応じてくれる。かくしてジンの夜這いは昼日中、太陽の下で成功を納めるのだった。
 けれど兄が弟の部屋を訪れたことはなく、その事実がジンを憂鬱にする。思えば兄から求められたことはない。兄の体に触れるジンを拒まない、それだけだ。疲れているからとか眠いからとか理由をつけて避けたとしても結局は拒絶しない兄の態度を、優しさだと思いたい。兄を抱きしめ、唇に唇で触れ、服を脱がせ、その先のことまでも許すのを、愛情だと思いたかった。
 客に言い寄られてぎこちなく断る兄の姿を見ていると、その信仰が揺るぎそうになる。
「兄さん、ちょっと」
 客を帰らせてフリーになった隙を突き、ジンは兄に後ろから近付いて耳打ちをした。兄が振り返るのを待たず店の奥へ先行し、更衣室に入って待つ。賑やかな店の音が、ここでは遠い。扉に隔てられて聞こえない筈の兄の足音に、耳を澄ませる。じっと、暗がりで猫が獲物を狙うような慎重さで、ジンは兄が後を追ってくるのを待った。
 ほどなくして扉が開き、喧騒と共に兄が滑りこんでくる。
「ったく、なんだよジン、小言なら後で――」
「兄さん」
 俊敏に兄の腕をとり引き寄せ、連立するロッカーの壁に押し付ける。さっきの女なんなのと、お決まりの台詞とねっとりと絡みつく視線に、兄はきつく睨むことで応えた。
「客に決まってんだろ」
「ふうん。客だから、寝るわけ?」
 目を細めて嘲ると、兄の頭に血が上り、さっと顔が赤くなる。
「断っただろうが!」
「どうだか。向こうはそうは思ってないだろうけどね」
 先程まで兄が相手した女が、帰り際に兄の手にメモを握らせていたのをジンは目に焼き付けていた。兄は突き返していたけれど、もしもジンがあの女なら、そう簡単には諦めない。
「うるせえぞ! ジン!」
 弟を蹴り飛ばすべく飛び出した兄の脚に、己の脚を絡めて動きを封じる。バランスを崩して近付いた兄の耳元に、ジンは口を寄せて囁いた。
「ちゃんと断らないと、勘違いしちゃうでしょ? 僕みたいに、ね」
 唇で耳朶を挟み、舌の先で襞をなぞる。首筋にてのひらを滑らせると、嫌がって頭を反らすのが可愛い。舐めながら鎖骨へと口元をずらし、歯を突き立てると声を上げる。
「っおい、ジン……!」
「僕にはちゃんと断れるの? ひどいなあ、兄さんは」
 息を呑んだ兄の胸元を舐めながら、手元を見ずにベルトを外す。金属が触れ合って鳴る音を意識すると、扉一枚を隔てた店先の喧騒も思い出す。まばゆい光。男女の肉体を包む布。充満する酒精の匂い。愛と欲と嘘が渦巻く街の夜。
「あはっ」とジンは笑い、「二位と三位がこんなことしてるのに、あいつら知らずに楽しそうにしちゃってさ」
 ベルトを抜き取り放り捨てると、ラグナの腰からするりとズボンが床に落ちる。突然あらわになった脚が寒いのか、兄はぶるりと背筋を震わせた。ふふっと笑ったジンは続いて、兄のワイシャツのボタンを外し、浮き出た腹筋に舌を這わせる。ジンの舌の下でひくひくと筋が震えるのは、そこが弱いところだからだ。
 膝を折って兄の腹に顔を埋め、両手で腰を抱きしめる。ジンの手が兄の脇腹をさすると、頭上で低い声が鳴く。見上げると兄の顔は赤く、声を上げないために口元を押さえている。ジンはにっこりと笑った。そうだね、ここも兄さんの性感帯だ。ジンだけが知っている。
「止めるなら今だよ、にぃさん」
「言ったって聞かねえくせに……!」
 どうだろう、兄の言うことなら大抵のことは聞くけれど。立ち上がりながら兄の体を裏返し、冷たいロッカーの壁に押し付ける。片手で触れる彼自身が熱いものだから、ジンまでくらくらしてしまう。まあ確かに、今やめろと言われても止まれない。兄はときどき正しいことを言う。
 ジンの手の動きに応じ、兄の脚の間で粘液が扇情的な音を立てる。うなじに唇で触れ、ゆるく挟んでは離すキスを繰り返しつつ、もう一方の手で脇腹を撫でた。兄は歯茎が痛みそうに歯を噛み締めて、隙間からけだもののように息を吐いている。ジンの瞳孔が開き、気付かぬうちに酷薄な笑みが浮かぶ。
 もっと声を聞きたい。兄の、切羽詰まったけもののような声を。鳴かせて、喘がせて、ねだらせたい。
 けれど、もしも扉の向こうの者共に聞かれたらと思うと嫉妬の炎に気が狂いそうになる。
「兄さん、辛いなら袖噛んでなよ」
 ロッカーに押し付けられた兄の腕をとり、口元に運んであげる。ロッカーに額と腕を押し付けることでようやく自分の体を支えていた兄は、逆らいもせずに自分の袖を噛む。声を漏らしそうになる度に強く噛みしめるものだから、上等なスーツの布が唾液で濡れていく。
「は、……ん、ジン……?」
 太腿の間にジン自身を差し入れると、違和感を覚えたのか兄が首だけで振り返る。不安げに揺れる瞳をなだめるように兄さんと甘い声で呼び、ちょうどキスをしやすい角度になった唇にキスをする。濡れた唇を触れ合わせて水音を鳴らすキスを繰り返しながら、ジンは兄を押し付けている隣の、自分のロッカールームを開く。少しの間兄から離れ、奥にしまいこんだローションを取り出した。荒い息を繰り返す兄がそれを見ている。快楽のせいで潤んだ瞳がジンを見詰める。上気した頬に浮いた玉の汗が、兄の肌を滑り落ちた。
 ああ――たまらない。
「兄さん、また袖、噛んでた方がいいよ」
 てのひらにローションを垂らし、兄の後孔にあてがう。冷たいゼリー状の液体が触れると、兄はきつく眉根を寄せて、苦痛と快感の綯い交ぜになった感覚を受け入れる。いじらしくて、たまらないなあと再び思う。本当は、ずっと思っている。たまらないなあ。この兄を、自分だけのものにしたい。
 女達が飾った爪と細い指で兄のスーツを撫で、肉体の想像に耽る間、ジンは兄の肌の滑らかさや汗の匂い、けだもののように吐き出される息や声音を思い出しては、それを知っているのが自分だけであることに優越感を抱いて過ごす。そうでもしないとやってられない。着飾って、不器用に愛想を振りまく兄が憎い。
 繋がったとき、一瞬兄の呼吸が止まる。ごめんねと耳の後ろにキスを落とすと、うるせえとでも言うつもりか、ラグナの口が袖を離れた。そのタイミングを見計らい、ジンは強く奥まで突いた。もう一度兄の呼吸が止まり、必死に袖を探して噛み、声を殺す。残念に思うジンは兄と繋がる快感の虜になっていて、声を聞かせたくないのと同じ強さで、ばれてしまえばいいのにと考えている。
 全部ばれて、辞めさせられたらいいのに。自分以外の誰かが兄にふしだらな気持ちを抱くことも、みだりな目で見るのも嫌なのだ。寛容な兄に免じて貸し出してやっているけれど、本当は独り占めしたい。だって自分だけの兄なのに。
「あは……きもちいね、兄さん。……ね、こんなこと、僕にしかさせないでね? 他の誰にも、させちゃ嫌だよ? 僕だけ、僕だけにして」
「ば、……かか、てめぇ……っ!」
 ぎろりと、涙目の端でラグナが睨む。ジンは飛びそうになる視界の中で、懸命に赤と緑の瞳を追いかけた。喘いで切れ切れになった息をなんとか落ち着けようと努力だけはして、吐息の合間になにと訊く。兄は弟を睨みつけ、口調だけは噛み付くように、
「んなこと、……当然だろうが……!」
 酸欠で茫洋としていたジンの瞳が、一瞬で喜色に転じた。あは、とオクターブ高くなった声がラグナの耳を犯す。
「だよね、にいさん」
 兄の体を知っているのはジンだけで、兄の汗の匂いを知っているのもジンだけだ。快楽に堪える顔を知っているのもジンだけならば、ひくつく筋肉の動きを知っているのもジン一人。
 兄に愛されているのはジンだけだ。
 強く奥を突くと兄が果て、一拍遅れてジンも続いた。ぐったりとした兄の体をロッカー支えながら、ジンも息を整える。
 視線を下げるとロッカーの表面が白く汚れており、濃厚な臭いが鼻を突く。よく拭き取らなければならないなと考えているジンに、兄は苛立たしげに舌打ちをした。
「ったく、いきなり盛りやがって。満足かよ、ジン」
「うん、とっても満足だよ、兄さん!」
 そりゃよかったな、とラグナはジンより早く整った息で溜息を漏らし、
「それよりこれ、どうすんだよ」
と、唾液と噛み跡でぼろぼろになったスーツの袖を持ち上げた。



 先に兄を店に戻らせ、遅れて更衣室を出たジンを出迎えたのは、蛇のような細い目だった。
「店の更衣室を私的に利用するのはよしていただきたいんですけどねえ」
 白々しく何を言うのやら。無視しようと思ったが、兄が先に絡まれているかもしれないと思いついて鼻を鳴らす。ならばジンが取り繕っても意味がない。尊大に腕を組み、顎をつきだしてハザマを見下した。
「では、僕達を辞めさせるか?」
「あら、もしかして辞めたいんですか?」
 ハザマは片目を開いて驚いてみせてから、睨んだジンに困ったように目尻を下げる。それらの表情の作り方はどれもわざとらしく、この男の真意は相変わらず読めない。
「ああ、辞めたいな。兄さんがいるから、僕も仕方なく続けてるんだ。知らなかったのか?」
「いや、知ってましたけどね。貴方全然やる気ないんで。でも、貴方達ご兄弟に辞められてしまうと、こっちは困るんですよねえ」
 ふ、とジンは口の端を釣り上げて笑みを作った。
「それなら決まりだな――辞めるのはひとまず保留にしてやろう。その代わり、明日、僕と兄さんは休みだ」
「えぇ……お二人同時にお休みですかぁ……。それに、休むときは一週間以上前に言っていただきたいんですけど……」
「僕が知ったことではない。それに、兄さんのスーツを新調しないといけないからな。商売道具だから、ないと貴様等も困るだろう」
 言い捨てて喧騒へと歩き出すジンの背中に、ハザマは溜息混じりに問いかけた。
「ラグナ君、貴方のスーツを着て戻ったようですけど――貴方達、どんなプレイをしてるんですか?」
 ジンは足を止め、振り返る。呆れ返ったハザマの顔に、凄惨に笑った。
「聞いていたんだろう?」
 肩を竦めたハザマに背を向けて、今度こそジンは歩き出す。きらびやかな明滅が男女の肉欲を炙り出し、その汚れた匂いをアルコールが紛らわすホストクラブ。享楽の夜はまだ長い。あと一人か二人相手して、そうしたら明日は休日だ。
 久しぶりの兄との休日を思い、ジンの口元は無意識に綻ぶ。
 今日は兄と一緒に帰り、一緒に眠る。朝日が昇ってから兄を起こし、一緒にお風呂に入ろうか。水音の中で兄を鳴かせ、体を拭ってベッドに寝かせてまた鳴かせたい。誰に聞こえる心配もない自分の部屋で、思う存分愛すのだ。兄が立てなくなるまでするつもりだから、当然スーツを買いに行くのは明後日になる。どうせ辞めさせられないのなら、辞めさせられるまで我儘を通してやるともう決めた。
「早く明日にならないかなあ」
 誰よりもみだらな妄想に胸をときめかせ、花のようにジンは笑った。





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2014.06.29.
先日のBBAMイベントで出たホストクラブBBネタです。
指名数NO.1がハザマ、NO.2がジン、No.3がラグナっていうあれです。
いやーあれすごかったですね!!!!!!